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こちらのページでは、アパート経営がどのように節税につながるのをご紹介しています。
会社から受け取る給与には、所得税や住民税が課税されます。
しかし、アパート経営を行っていれば必要経費を計上することができるため、所得税や住民税を節税することに繋がります。
その仕組みについて詳しく見ていきましょう。
アパート経営では不動産所得(家賃収入)が発生するため、その分は給与所得とは別の収入としてみなされます。確定申告では給与所得と不動産所得、アパート経営における必要経費の証明書類を提出する必要があります。そこから算出される収入の金額を元に支払う税金が決まります。
つまり、不動産所得を減らすことで収める所得税を減らすことが可能になります。そのためには必要経費を漏れなく計上し申告することが重要です。
アパート経営で必要経費として計上できる項目は以下となります。
所得税の金額により住民税が算出されるため、所得税が減れば住民税も自動的に少なくなります。
新築アパートは中古アパートに比べて建物の資産価値が高く、減価償却費も高くなります。減価償却費は、購入当初の資産価値と配分する年数(法定耐用年数)から算出されるものです。新築では建築費が資産価値にあたり法律で決められている法定耐用年数は、木造アパートの場合で22年(※)です。
つまり、新築アパートの資産価値を仮に6,000万円として22年で割ると、購入時から毎年約272万円を費用として計上することができる計算になります。一方、中古アパートの場合は新築物件と比べて減価償却できる期間が短く、その金額も低くなります。
減価償却費は帳簿上において収支を赤字にしてくれるものですが、「赤字」といっても実際に支出があるのではなく、減価償却費分は手元に残ることになるので、建物価格はなるべく高い方が有利。減価償却費が高くなると、収入から差し引いた利益も抑えることができるので、結果として課税対象額も抑えることができ、節税対策につながります。
アパート経営において必要になる修繕費には、「大規模修繕費」「修繕予防費」「小規模修繕費」の三つがあります。
小規模修繕費は日常的な清掃などの少額な費用です。また、修繕予防費を惜しまないことで、結果的に大規模修繕費を抑えることが可能です。
大規模修繕費には修繕積立金として毎期積み立てたものを充てることになりますが、必要経費として計上することができるため、帳簿上の所得を減らすことにも繋がります。
ただし、修繕費というのは、あくまでも原状回復のための費用となります。アパートの資産価値を高める「資本的支出」は修繕費と混同しがちですが、必要経費として計上できないので注意が必要です。
不動産取得は他の事業所得や給与所得と「損益通算」できます。
損益通算は、何らかの事業で黒字経営が続いていたとしても、アパート経営で赤字となった場合、黒字分と赤字分を差し引きして、最終的な所得(利益)を確定するという税制上の制度です。
経営が順調で黒字が続いている場合、税金を支払っても十分な利益が残るかも知れませんが、赤字であった場合、積極的に損益通算を行うことでその他の事業で発生する所得税や住民税などを軽減できます。
基本的に損益通算は様々な所得で実行できますが、例えばNISA(少額投資非課税制度)のような制度を使って得られた所得については、損益通算ができない場合もあるため注意してください。
土地を所有している人は、土地の評価額に応じて固定資産税が課せられるのです。ところが土地を更地として残した場合、アパートを建築して住宅利用する際、住宅用地に対しては優遇措置が受けられ、固定資産税の軽減措置を活用できます。
固定資産税の軽減措置は、アパートの規模に応じて課税標準額の最大2分の1が減税されるため、土地を平面駐車場として利用している場合よりも、アパート経営を始めた方がトータルの収支でメリットを追究できるかも知れません。
固定資産税の軽減率は以下の通りです。
2020年3月31日までに建築されたアパートの賃貸住宅に関して、以下の条件に該当する場合、固定資産税が2分の1に減額される「特例軽減措置」を受けられます。
なお、特例軽減措置の実施期間は「一般住宅」と「長期優良住宅」でそれぞれ以下のように定められています。
固定資産税の軽減措置と同様に、都市計画税についても軽減措置が適用されます。都市計画税における軽減率は以下の通りです。
また、土地や家屋を買うことで相続財産の評価額を下げられるため、アパート経営は節税対策としても人気があります。
相続資産の圧縮を行う方法としては、「課税対象額」「相続資産」を減らすこと、また「非課税、控除額」を増やすことが挙げられます。
アパート経営が相続税や年金対策になる仕組みを見ていきましょう。
空き地を持っている場合、そのままにしておくと評価額は路線価または固定資産税評価額になりますが、空き地にアパートやマンションを建てることで「貸家貸付地」となり、評価額を下げることが可能です。
その他にも、アパートやマンションを建てる際にローンを組むことでローンが相続財産から差し引かれることになり、相続財産の総額を減らすことができます。
例えば、5000万円で建てた不動産に対しては、時価の50%程度の評価額となります。木造および軽量鉄骨造では50%、重量鉄骨造では55%、RC造では60%(※)の割合で算出されます。
よって、木造アパートの場合、借入の5000万円から総資産額を引いた2500万円が相続財産となります。
また、修繕積立の預金がある場合、帳簿上負債とみなされることがあります。
修繕積立金を必要経費として計上できるのは実際に修繕が行われたときですが、修繕積立金が管理組合への支払い義務を負っているなど一定の条件があれば支払い時に計上することが可能です。相続税の課税対象となるのは、相続財産額から負債が差し引かれた分となるため、相続資産の圧縮に繋がります。
贈与税には暦年贈与という非課税枠が設けられており1年間の贈与金額もしくは相当額が110万円までであれば贈与税は発生しません。そのため、生前贈与によってマンションやアパートといった物件を受け取る場合、最初から110万円を引いて税金の計算をすることが可能です。
また、事業性のある物件の取得については対象外となるものの、受贈者が自宅用住居の取得費について贈与を受ける場合、省エネ等住宅の場合であれば1千万円まで、それ以外の住宅に対しても500万円までの住宅取得等資金が贈与税非課税とみなされます。
ただし、住宅取得等資金についてはあくまでも受贈者が自らの住居として物件を購入することが前提となっており、賃貸用物件に対して非課税枠を適用することはできません。
加えて、アパートを経営することは年金にも影響。日本の公的年金の受給額は減少傾向にあるうえ、受給年齢が引き上げられて、年金に対する不安は高まっています。
そのような中、不動産投資を始める方が増えているのは、不動産の賃料収入で長期的な資産形成で私的年金の確保をしておこうという考えがうまれているからです。私的年金の確保ができれば、余裕のあるセカンドライフも望むことができるでしょう。
公的年金の支給額は月額20万円程度です(※)。しかし、老後夫婦でゆとりある生活を行うためには最低でも35万円程度必要(※)と考えられます。
アパート経営による家賃収入でこの不足分を補うことが可能です。私的年金とはいっても、一定の年齢に達するまで収入を得られないわけではなく、入居者さえいれば手元にお金が残っていくという大きなメリットがあります。また、タイミングに応じて売却することで一度に多額の収入を得ることも可能です。
アパート経営で税金対策をするのであれば、「青色申告」を行うことが基本となるでしょう。青色申告とは簿記を活用し記帳を行い、税務署長の承認を得る記帳方法で、青色申告を行うことによって青色申告特別控除を適用できます。
不動産所得=収入金額-必要経費-青色申告特別控除
上記の条件を満たせば、65万円の青色申告特別控除が適用されるため、条件をクリアできるか検討してみましょう。
青色申告であれば、青色事業専従者給与を必要経費として扱えるというメリットがあります。青色申告を行えば、日常生活において生活費を共にしている15歳以上の配偶者、そのほかの親族への給与を必要経費として計上可能です。ただし青色事業専従者給与を行うためには、10室以上のアパートというのが条件となるので注意してください。
ただ青色申告以外の白色申告の場合は事業専従者控除自体はできますが、配偶者なら86万円、そのほかの親族なら50万円までしか計上できません。そのため青色事業専従者給与の方が自由に金額設定ができるため、節税対策としては効果的でしょう。しかしながら業務に合った適切な給与でなければ否認されるケースもあるので、定期巡回・入出金管理など実際の管理の仕事も必要となります。
小規模企業の経営者・役員・個人事業主などのための積立によって退職金を支払う制度のことを「小規模企業共済」といいます。小規模企業共済は、掛け金のすべてを所得控除できるため非常に高い節税効果があるでしょう。もちろんアパート経営においても小規模企業共済を活用できるので、アパート経営を行っている方にもオススメです。退職や廃業に追い込まれたときに受け取ることが出来るため、もしものときも安心でしょう。退職金として貯蓄することができるため、将来への備えに役立ちます。月々の掛金は1,000円から70,000円まで500円単位で自由に設定でき、無理なく貯蓄できるというメリットもあるでしょう。節税しながら将来に備えたいという方にはおすすめの税金対策となります。
アパート経営において節税対策を考えることは重要ですが、全ての支出について経費として計上できるわけではありません。ここでは一般的にアパート経営の支出として節税対策に活用できない経費の概要を解説します。
当然ながらアパート経営と関係のない費用を経費として計上することは認められません。また、間接的にはアパート経営の役に立っていたとしても、主目的が別にあり、あくまでも直接的な関係のない費用についても同様です。
例えば、アパート経営を健全に進める上でオーナー自身の健康管理は大切ですが、オーナーの食生活を改善するためのサプリ購入費用が認められないと考えれば分かりやすいでしょう。
例えばアパートの管理をするため定期的に自宅とアパートを車で行き来している場合、車に関する支出が業務上必要な経費として一部認められます。しかし、その車をプライベートでも利用している場合、支出の全てを経費として計上することはできません。
業務上必要な範囲と、プライベートで利用している範囲を区別し、支出全体から業務上必要な範囲について按分した費用のみを経費として計上できます。
なお、業務上必要な範囲とプライベートの範囲を区別できない場合は経費計上も不可能です。
不動産投資ローンの利息分についてはランニングコストとして経費計上は可能ですが、不動産投資ローンの元本部分については経費計上することはできません。
そもそも不動産投資ローンの元本に対する支払いは、アパート経営を続ける上で特別に支払いが必要になった費用でなく、すでに借りているお金を単に返しているだけです。
そのため、元本部分は除外して経費計算をするようにしてください。
日本の税制では所得金額の上昇に応じて税率も上がっていく累進課税制が採用されており、実は収入条件や所得額によって節税対策を考えるべき人と、節税対策を行うべきでない人がそれぞれ存在しています。
ここでは一般的に節税すべきか否かの判断基準となる「課税所得900万円」を境として解説します。
年間の課税所得が900万円を超える人に関しては、そのままだと所得税や住民税の税率が高くなってしまうため、譲渡税率を考えて不動産投資による節税対策を実行することが有効です。
なお、上記の金額はあくまでも課税所得額であり、年収額でない点に注意してください。
対して、課税所得が900万円以下の人の場合、譲渡税率と所得税・住民税の税率との差がそこまで大きくないため、節税対策として不動産投資をスタートさせてもその効果は限定的です。そのため、それほど大きくないメリットのために不動産投資のリスクを背負うことになるため、一般論として課税所得が900万円以下の人は節税対策として不動産投資を行う必要がないといえるでしょう。
なお、これは減価償却によって赤字計上を行ったとしても変わることがなく、具体的に得られるメリットは年間でおよそ10万円程度です。
節税による効果がゼロではないものの、不動産投資には様々なリスクが存在しており、年間10万円と引き換えにリスクを引き受けることは代償に対価が見合っていないと言わざるを得ません。
税金対策としてアパート経営をしているなら、必ず注意しなければならないポイントがあります。アパート経営を後悔しないためにも、注意点を押さえておきましょう。
NOIとはNet Operating Incomeの略で、営業利益です。
NOI = 年間の総収入 - 年間の必要経費
上記の計算式で算出され、年間の家賃収入から水道光熱費や維持管理費などの経費を差し引いて求めます。
上記のような費用は差し引かないため注意してください。
NOIはアパート経営における実際の収支と近い数値となり、単純かつ分かりやすい算出方法です。そのため不動産仲介会社もアパートの実質利回りを算出する際、NOIを基準としています。
このNOIを基準とした際、維持管理費・水道光熱費などの必要経費は賃料の20~30%程度が目安となるため、通常アパートの経営利益率は70~80%程度となります。NOIという基準で考えれば、アパート経営は収益性が比較的高く、黒字経営の状態が通常と言えるでしょう。
営業純利益を指すNOIと似ている概念を持った「不動産所得」についての把握も大切です。
国税庁では上記のように不動産所得として定義しています。
アパートを経営する際、「土地や建物などの不動産の貸付け」という項目に該当するケースがほとんどです。
不動産所得=年間の総収入-NOIを算出する際の諸経費-減価償却費-その他の諸経費
上記の算出方法で、不動産所得は求められます。NOIとは違い、減価償却費・アパートローンの利子・修繕費などの諸経費も含まれ、アパート経営にかかる損益が把握可能です。もちろんNOIから減価償却費・諸経費なども差し引くので、不動産所得の利益率はNOIの利益率よりも低下します。減価償却費は賃料収入の30~50%程度になるケースが多いでしょう。また修繕費をはじめとしたの諸経費は、多めに見積もって賃料収入の10%程度なので、これらの経費を踏まえて考えれば不動産所得で見た諸経費は総収入に対して60~90%程度となります。つまりNOIや不動産所得の数字で見た場合、アパート経営は黒字化が図れる事業形態と言え、基本的に不動産所得は赤字にならないと言えるでしょう。
NOIと不動産所得の2つの算出方法で見れば、アパート経営は収益性が高い事業形態と言えます。そのため、アパート経営において赤字が続いている状態であれば、経営的に大きなリスクを抱えている状態だといえます。
しかし、アパート経営を始めたばかりで、経営自体が軌道に乗っていないタイミングでは不動産所得が赤字になることも多いため、損益通算を積極的に行った方が良いと言えます。とくに初年度は減価償却費が大きくなり、入居者募集のための広告宣伝費も多くかかるもの。初年度の赤字で損益通算を行うのは事業経営として決して悪いことではありません。
また、不動産所得が赤字になれば、所得税・住民税を圧縮できる点でメリットになりますが、長年損益通算を継続できる経営状態なら、どこかに経営のリスクがないかのチェックが大切です。たとえば「継続的に空室が続いている」「建物や設備の老朽化」などが考えられ、状況次第ではアパートの売却も検討した方が良いでしょう。
税金対策としてだけでなくアパート経営の一切において、信頼できる不動産投資会社を見つけることがとても重要です。
まず、信頼できる不動産会社でなければビジネスパートナーとして業務を任せることができません。また特に悪質な不動産投資会社の場合、例えば管理費を水増ししてオーナーへ請求し、経費として計上させた上で、費用の一部をキックバックするといった手法を提案してくることもあります。
しかし不正な手段で経費計上や節税対策を行ったことが発覚すると致命的な損害へつながりかねないため、必ず個人的にも社会的にも信頼できる不動産投資会社を探すようにしてください。